わくわくアラスカ紀行

アラスカ、ばり寒い

あなたは私の心の酸素

今日、ロペが死んだ。"どうやって"死んだのか。そんなこと、わたしは知らないし、知りたくもない。可愛いロペの可愛くない瞬間なんて私は見たくもないし、知らないままでいい。けれど、私はロペが"何故"死んだのかはわかる。知っている。嫌なくらいに知って…

鹿の角

俺の家には鹿の角があった。 俺の家は娯楽もない山奥にあったので、おもちゃと同じくらいの気軽さで鹿の角はそこにあった。 死んだ爺さんが昔、猟銃で撃ち殺した牡鹿の立派な角を丁寧に剥ぎ取って加工し、インテリアとして飾っていた。ある頃からか、俺はこ…

龍の背

冬が近づいてきて、郊外の草原に龍の尾がやってきたと朝方、隣のおばあさんに聴いた。霧が深くかかり、ちょうど見えないでいたが、確かに霧の向こうに何か巨大なものがある気配を感じる。 この地域に龍が現れるなんて、何年振りだろうかと日記帳を引っ張り出…

遊具修理者

今年の夏はかつてない程の猛暑で、ジャングルジムを作るのが困難だった。 材料の鉄とニッケル、それからプラスチックの混合物が暑さで化学反応を起こし、塑性、粘性がバラバラになり、上手く形を保てなくなった。土地開発が進み、やっと重い腰を上げた自治体…

台風一過

窓ガラスを勢いよく雨が叩く。どこか遠くで何かが転がるような大きな音がした。窓から見える空はおどろおどろしい灰色で、渦を巻くような雲だった。 今朝方、都内に上陸した台風は大型で、現在破壊の限りを尽くしながら北へと抜けていこうとしている。本来な…

私を撮ってくれる誰か

橋下が中東で死んだという報告を受けた。 紛争地帯に馬鹿みたいにズカズカ突っ込んで、現地の若者にピストルだかライフルだかでズトズドやられて呆気なく死んだらしい。橋下が学生時代、動物園の清掃員のバイトをして貯めて買った一眼レフのカメラは粉々にな…

冷たい街の、上澄みで

橋下の背は高い。 こいつはほんと、邪魔なくらい背が高くて、小柄な私と並ぶとそれが余計に強調されて、社内の先輩達に凸凹コンビって不名誉なあだ名までつけられてしまう。配属された部署の新入社員は私たち二人だけで、どうしても行動が一緒になる。それが…